「30秒の動画はいくらですか」とよく聞かれます。実際には、同じ30秒でも4万円のこともあれば、15万円のこともあります。
この差を生んでいるのは、動画の長さではありません。何をどう作るかと、頼む時点で、どれだけのことが決まっているかです。決まっていないことが多いほど、見積りは高くなります。
この記事では、その理由と、頼む前に決めておくと見積りが下がることを3つご紹介します。
動画の値段は、人の作業時間で決まる
動画制作の見積りは、工程ごとの作業時間を積み上げて作ります。制作会社が公開している工程別の相場は、おおよそ次のとおりです。
| 工程 | 相場 |
|---|---|
| 企画構成案 | 5〜50万円 |
| 絵コンテ・シナリオ作成 | 5〜30万円 |
| グラフィック制作 | 1枚あたり 5,000〜10,000円 |
| アニメーション制作 | 10〜50万円 |
| ナレーション | 3〜10万円 |
| BGM・効果音 | 3〜15万円 |
どの工程も、ほとんどが人の作業時間です。そのため、尺を半分にしても値段は半分になりません。30秒に同じ情報を入れれば、カットの数は減らないからです。
決まっていないことは、多めに見積もるしかない
作業時間が読みにくくなるのは、決まっていないことがあるときです。
たとえば「かっこいい感じで」というご依頼。かっこよさにもいろいろあるので、作る側は見当をつけて1案作り、イメージと違えばもう1案作ります。この往復が2回あれば、それだけで数日かかります。
困るのは、この往復が何回になるかを、見積りの段階では読めないことです。読めない分は、多めに見積もるしかありません。修正の回数も同じです。一般には各動画2回までを費用に含めますが、回数を先に決めていなければ、作る側は多めに見込んで値段をつけます。
同じ30秒でも見積りに差がつく理由のひとつが、この「読めない分」の上乗せです。
頼む前に決めておきたい3つのこと
1. 参考にしたい動画を1本選ぶ
「こういう感じ」を言葉で伝えるのは難しくても、動画を1本見せれば一度で伝わります。作る側は雰囲気と仕上がりの水準をつかめるので、往復が減り、見積りも速く正確になります。私もお見積りの前に、まず参考動画をお願いしています。
2. いちばん伝えたいことを1つに絞る
60秒で3つのことを伝えようとすると、カットが増え、構成も複雑になります。伝えることを1つに絞れば、その分だけ安くなります。
さらに「最初にこれを見せて、次にこれを説明する」という順番まで決まっていると、作る側はそこから始められます。上の表で企画構成と絵コンテにまとまった金額がかかっているのは、この順番を考える作業に時間がかかるからです。自社の事業をいちばんよく知っているのはご依頼いただく側なので、粗い形でも十分に役立ちます。
3. 使える素材をそろえる
ロゴや商品写真、既存の資料があれば、先にお送りください。あるものを使えば、描く手間が減ります。反対に、画面のUIを描き起こしたり、人物を一から描いたりすると、見積りは数万円単位で上がります。
決めておくと、何が変わるのか
決めておくことで下がるのは、作る側が「読めない分」として上乗せしていた金額です。私の実感では、見積りの1〜2割です。半額になるような話ではありません。
もうひとつ変わるのは、何社かに見積りを頼むときです。何も決まっていないまま3社に頼むと、どの会社も「何回やり直しになるか分からない分」を、それぞれの考えで上乗せします。上乗せの量は会社ごとに違うので、並んだ金額の差は、制作費の差というより上乗せの差になります。決めてから頼めば、各社が同じ前提で見積もるので、金額をそのまま比べられます。
安くするときに、削らないほうがいいもの
一方で、削れば安くなるものの中にも、あまりおすすめしないものがあります。
ひとつは、途中の確認です。確認を飛ばすと、最後に出てきたものがイメージと違ったとき、打つ手が残りません。
次に、イラストをフリー素材で済ませることです。どこかで見た絵が並ぶと、どの会社の動画だったのかが記憶に残りません。
もうひとつは、ナレーションをAI音声で済ませることです。表にある3〜10万円はほぼ浮きますが、社名や専門用語の読み、抑揚に不自然さが出やすく、「手を抜いた動画」と受け取られることがあります。
安くするなら、品質を削るより、決まっていないことを減らすほうが、安くした意味が残ります。
決めきれないところは、相談で一緒に決めます
とはいえ、動画を作るのに何を決めておけばいいかは、作る側でないと分かりにくいものです。初めての依頼で「おまかせで」となるのは自然なことです。決めきれないところは、お見積りの前のご相談で一緒に決めていけば十分です。
頼む前に少しだけ決めておく。それだけで、見積りは変わります。

